Contessa dei Venti

Contessa dei Venti(風の伯爵夫人)は、とても高貴なお方であらっしゃいます。イタリアはSicilia島の最高峰Etna山(標高3323m)に時どき、その麗しきお姿を現されます。古代イオニアの海から好い風が吹く日には、ふんわりとしたレンズ雲をかたどったpiucure hutを目深にかぶり、麓のお城の裏口からひっそりと、忍び足にて出で立たれます。風の噂によると、エトナの山頂にて天の貴公子と密会をなされているとか。風の国じゅうの恋敵と競い(contesa dei venti)これを退けられるほどの熱情家とあらっしゃって、その御心の深さは常民らのはかり知れるところではございません。が、いやしくも風の吟遊詩人をつかまつるこの身として、拙いながらも貴婦人のしめやかなる恋路に一花添えて差し上げませう

Contessa dei Venti

シチリアの雲の高嶺に花と競う風の伯爵夫人なりけり

雲高みはるかに仰ぐとばかりの風にぞしるき人の匂ひは

そら今朝も目深に覆ふ飾り帽山の彼方(あなた)に誰か待つべき

吹きのぼる風にうき世は白菊の揺れる尾上の園へこそ行け

天翔ける恋しきひとよいつしかと松にかかれる叢雨の袖

はしきやし君が光の口づけにほどける影を虹ぞふちどる

邦も陽もかたぶく風のままにとてつひえも知らぬ恋の道かも

茜ぞら遊び暮らせる貴婦人に帰りの馬も立ちぞわづらふ

君がため飽かでやすらふ別れ路に急き立て顔の山おろしの風

さればよと人も咎むる寝覚めしてふもとの窓にくもる月影

たまきはるこころは空にあるものを思ひや袖に星と降る夜

茜さす君が頬にぞ世は映えて懲りずまにまた潮風ぞ吹く