Fujii Kazeを詠める、十首
# grace
年明けて最初に歌ふgraceにアガるこころの初日の出やも
いちばん最初に聴いたFujii Kazeの曲です。コロナ禍、オンラインで家庭教師をしていた頃に教え子から「好きなアーティストの、好きな曲です」と紹介してもらいました。聴いた瞬間、「ああ、これのためにこの子と出会ったんか」と直観しました。小さなウインドウ越しでのみ繋がる年若なお相手だったけれど、彼がもたらした大きな福音はぼくのこころに偉大な風穴を開けてくれました。やや非定型発達気味の、天使のように綺麗な男の子でしたっけねえ。あの子元気にしているかなあ。指折って数えれば、もう大学生にもなりましょうか。早いものです、信じられません。人も世もまるで風ですね。
# もうええわ
あきらめつ踵かへして追ひ風に軽むこころの闇を嘯け
こちらはいちばん最近聴き始めた曲です。気が向いたとき「あ、新しいのでも聴いてみよう」と、まったくテキトーにYouTubeから引っ張ってくるものだから、いつ頃の曲だかはさっぱりわかりません。なんとなく『青春病』に似た思春期最後の反骨心みたいなものを感じるけれど、ガンガン断捨離ウェルカムなところはすっかり『きらり』などに通ずる気もします。スローテンポでぬくい感じがウイスキーやクラシカルなジンとよく合うせいか、タイトルとは裏腹になかなか飽きが来ません。やっぱ出会うべき時に出会ってるって本当ですね、ひとも歌も。
# 旅路
まだ残る承認欲を根絶やしにするまで僕の旅路はつづく
若々しいんだけど、一歩も二歩も先行ってるKazeさんだからこそ唄える予祝的な曲だと思います。だからぼくのプレイリストでは最初に置いといて、そのあと娑婆に一度や二度迷うけれど、『grace』で「ほら、戻ってきたよね」って、勝手ながら「この日さえも懐かしんで、すべてを笑い、すべてを愛す」ことにしています。家庭教師やめてしばらく旅三昧していた頃、よく旅先に携えて行きましたっけね。もう今後ああいう旅はやらないと思うけれど、この曲がいつまでもこころの旅路をば照らしてくれそうです。
# きらり
くらさじよ思ひ捨ててしゆふべより放つや永久の君てふ光
YOASOBIがカバーしても面白いんじゃないかってくらい、疾走感が心地よい春一番のような曲です。でもこのサビ、どこかで聞いたことあるような…『となりのトトロ』の挿入曲『風の通り道』のメロディを、”風”にかけて、たぶん意図的に借りていると思います。「あ、やっと来たわー、ネコバス」みたいな軽さで飄々と、「乗車賃。ぜんぶ捨ててけよ」なんて、日本人の心の故郷めがけて、さらりと空気砲を吹き放ってくるノリです。よき、ぶっ飛んじゃえ。ぼくのランニングにも欠かせないエントリとなっております。

# 花
はゝきゞも空華もあはれおのが身とあはせてみばや君が掌
個人的にはFujii Kazeの楽曲のなかで最もスピってる部類のひとつだと思っています。「おまんらええ加減にせいや、ほんならこんでもくれたろか」と、衆生の口に花を突っ込んで生けるかのような狂ったパッションすら感じます。死生観のひっくり返るような奇天烈なMVや、曲の最後にマントラのように繰り返す意味深なフレーズにいたるまで、秘儀の祝詞めいていて、インドのお香やべらぼうに強い酒なんかとよく合います。まあ、ろくでもないですわな。自分の葬式でこれ流すひといたら、ぼくが棺桶の中身代わってあげてもいいですけど(笑)
# 満ちてゆく
手放せば満つるさだめのたまゆらにふるやあはれと涙こぼるゝ
ぼくがFujii Kazeにグッと引き込まれて虜になったきっかけは、この曲の2番の歌詞と、サビの一節「手を放す、軽くなる、満ちてゆく」という沁みるフレーズでした。静謐なピアノに始まり、伸びやかなステップを踏むような中盤、『第九』のように荘厳だけど重くはない終曲という、つつましくも美しい人生を思わせる感動的な構成になっています。初めて聴いた時、「なんでぼくより若いひとがこんな曲を作れるんだ?」と絶句した覚えがあります。「たましひに年なんてない」と最近友人に言われましたけれど、ほんまにそうですわ。so genius.
# 帰ろう
何もかもゝう終はりだと思つたら始まつてすらいなかつた件
上の歌は全然関係ないときに詠んだものでふざけた感じだけれど、『帰ろう』という曲は真剣で、時代を超えた普遍的な問いかけに満ちています。「憎み合いの果てに何が生まれるの?」「去り際の時に何が持っていけるの?」って。世間で上に立つ人にこそ聞いてほしい曲な気がします。ちなみに、”まだまだこれから”というメッセージはKaseさんの楽曲の随所に現れるものだから、ぼくの歌もあながち吐き違えとも言い切れないはずです。この曲の最後の「ああ、今日からどう生きてこう」って詞は、堀辰雄が訳した「風立ちぬ、いざ生きめやも」の”風の時代”版オマージュなのでは?なんて、さすがに読みすぎでしょうか。
# Hachikō
白黒のさだめなき世を渡るひとに何をか待つと問ふもむなしく
A flawless gem of a song, whose English lyrics are also imbued to the fullest with his unique character: it overlays the most peaceful and warmly gentle heart in the universe onto a stone statue standing still in the noisiest place in the world.
The falsetto line “You’ve been patiently waiting for me” overflows with such deep love and gratitude that, if I sing it seriously, I can’t hold back the emotion that wells up, and I don’t think I could ever make it through the song at karaoke. (co-writtern with Mx.perty)

# 真っ白
たましひは高く清らにとこしなへ穢るゝはいつもぼくのみぞよき
「悪いのはそうよ いつも私でいいの」って、なんかぼくの母もむかし口癖にしていたような一節がやけに耳に残る、下町の銭湯帰りに聴きたくなるような日常感あふれる一曲です。全体の曲調がなんとなく気怠く切なく、ノスタルジックに響きます。けれども「これはたましいの成長に必要な別れなんだよ」とやさしく諭す雰囲気も滲み出ていて、「あいつのおかげで、ひとつカルマ減ったわ」と確かに感じさせてくれる高次元の頼もしさも感じます。日本語詞の曲では最後にリリースされた作品のようです。終いのフェイドアウトが、晩秋の昼下がり東の空へと消えてゆくような。hmm…sad yet happy, I’m OK.
# Love Like This
かかる慈悲ありと示せしひとなればよゝへてもなほ逢はんとぞ思ふ
Whether this song is about a lover, a mother, or the “Great Mother” is ultimately up to each listener’s interpretation. However, its gently radiant melody, which seems to let a bright and tender world quietly unfold, is a salvific light that brings a dawn of love to every listener’s lonely heart. With a pleasant tempo, it expresses an overwhelming sense of awe and emotion at awakening to an agape far greater than any small self-love, making it a religious piece that symbolizes his rare and precious soul. Amazing. (co-writtern with Mx.perty)
以上、誕生日一日違いのLightworker from Geminiにこころからの感謝を込めつつ