先日、紀州和歌の浦を訪れました。和歌の女神・衣通姫をまつる玉津島神社、景勝地・片男波など和歌に深いゆかりのある場所で、言ってみれば”聖地巡礼”的な。初めて訪れたのは三年前ですが、故あってこの度また足を運ぶ至りとなりました。梅雨明け十日のよく晴れた、蒸し暑い一日でしたが、ところがら海風も吹いて、内地よりはまだ凌ぎやすい印象でした。
玉津島神社の御前に手を合わせてから社務所へ顔を出し、お札とお守りを新しいものに替えていただこうとしたところ、祝部の方が「何かなさっているんですか」と訊いてくださった流れで、筆と短冊を貸してくださり、側にあった短歌ポストに一首奉納させていただけたのは、この地に立ちかへり跡垂れむと宣り給ひし玉津島姫のご加護にやとも、推しはかられて大変嬉しい出来事でした。
三年前には廃屋同然だった日本家屋と庭が手入れされて「あしべ庵」という風情ある休憩所になっていましたが、ぼくがお邪魔したのはちょうど管理団体の方々が作業を終えようとしていたタイミングで、小さな座敷にて、夕風に涼みながらいくらかお話できたのもよいひとときでした。

以下、玉津島の女神に奉りし歌 十首(短冊に書いたのは最初の一首のみ)
跡垂るる玉津島姫たふとさに弥おきまさる言の葉の露
立ちかへり和歌の浦波きてみれば衣通姫のかげのまぶしさ
透き通る衣の光はるばると沖まで照らす和歌の姫神
潮風の吹上の浜の松が枝に宿る月さへうちけぶりつつ
わたつみの底にまでさす光もてわか道照らせ玉津島姫
夏衣かけし袖さへ苦しげに風ぞ待たるゝ吹上の浦
夏の陽のはや敷島に照りつけて道行きわぶる旅の朝かな
神かけてたのむしるしに天が下さきはふやまとうたの霊こそ
情けあれな身は末の世にありながら古きを慕ふこころ清さに
なほ頼む和歌の浦波吹上の浜の真砂の尽きぬ代々まで